季節の言葉

四季折々の言葉や行事を綴っていきます

文学に描かれた季節 初夏 『新茶のかおり』田山花袋

『新茶のかおり』は初夏の魅力が横溢した好エッセイです。 「花曇り、それが済んで、花を散らす風が吹く。その後に晩春の雨が降る。この雨は多く南風を伴って来る。」 「躑躅は晩春の花というよりも初夏の花である。赤いのも白いのも好い。」 「初夏の空の碧…

文学に描かれた季節 春 『草枕』 夏目漱石

『草枕』は主人公である画家「余」が「那古井の温泉場」という架空の地で、ヒロイン「那美さん」の肖像を描きあげるまでのあらましを書いた作品です。もっとも、作品の主題は那美さんの肖像を描くことではなく、那古井の温泉場を舞台に、漱石の文明観、美術…

白木蓮

白木蓮の花が満開です。白くて大きな花弁が春の日差しを浴びて咲いているさまを見ると、いよいよ春本番、といった感じが強まります。 実際、今週になってからは朝晩ともにすっかり暖かくなってきました。寒がりの私は部屋のなかでも何枚も重ね着をするのが常…

雛飾り

今日、雛人形を飾りました。いつもは、2月も末になってから飾るのが常なのですが、今年は少し早く飾りました。 本来はもっと早い時期、たとえば、立春になったらすぐに飾るのがよいといわれています。また、遅くとも雨水の時期までには飾るようにするのが一…

早春賦

春は名のみの…で始まる早春賦は、春を待ち焦がれる心を谷の鶯に仮託して描いた唱歌として有名です。 特に春先の天候がはっきりしないときには、 春と聞かねば知らでありしを 聞かばせかるる胸の思いを いかにせよとのこの頃か いかにせよとのこの頃か という…

春光

風は冷たいですが、日差しが暖かく感じられる一日でした。空気は冷たくて、ポケットに入れた手も悴みましたが、建物に射す太陽の光がまぶしいようでした。昨日のNHKのニュースで「光の春」という言葉を使っていましたが、この光景をいうのだろう、と妙に感心…

春寒

今日は午前中は雪が降り、午後は霙となりました。これを書いている今は雨が降っています。面白いもので、午前中はあたたかく、午後のほうが寒くなりました。雪は気温が低くなければ降らないので、午前中のほうが寒いのではないかと思うのですが、実際は違い…

悴む

「悴む」と書いて「かじかむ」と読みます。寒さのために指の先の感覚が麻痺したようになって自由に動かなくなることをいいます。俳句では冬の季語として使われています。 指先に力が入らなくなって、ものがうまくつかめなくなるのは冬、特に、寒の入りから立…

文学に描かれた季節 冬 『門』夏目漱石

『門』は、主人公宗助が、他人の妻を奪いとった過去の罪と対峙する物語です。このように書くと、宗助と運命との相克といったイメージがわきますが、そうではありません。過去、自分が犯した罪から救われることを願いながら、結局は何もできずに終わる人の姿…

文学に描かれた季節 冬『青年』森鴎外

『青年』は主人公の小泉純一が東京に出てきてから2ヵ月ほどの間の出来事を描いた作品です。時期は10月終わりから翌年の元旦。晩秋から初冬にかけての東京と箱根が舞台となります。 「今日も風のない好い天気である。銀杏の落葉の散らばっている敷石を踏んで…

暮の秋とは 秋の暮との違いは何?

暮の秋とは秋が終わる時候をいいます。晩秋の頃をさして使われる季語です。これに対して秋の暮とは秋の一日が終わるときを指します。秋の夕暮といえば秋の暮のことになるのです。 使われている言葉は同じでも、順序を変えると意味がまったく違ってくるという…

『ソロー日記 秋』H.G.O.ブレーク編

H.G.O.ブレークが編集したヘンリー・ディヴィット・ソローの日記を読みました。春夏秋冬の季節ごとにまとめられた日記で、今回読んだのはそのうちの秋の部にあたります。9月の末から12月の終わりまでが収録されており、秋から冬にかけてのウォ―ルデン湖周辺…

秋天拭うがごとし

「秋天拭うがごとし」とは、国木田独歩の名作『武蔵野』に描かれた秋の情景です。武蔵野の美を叙述するにあたって、独歩が自身の書いた日記を参照しているのですが、その中の一節となります。原文はもう少し長く、 「秋天拭うがごとし、木葉火のごとくかがや…

『二百十日』夏目漱石

夏目漱石の『二百十日』を読みました。主人公の圭さんと碌さんの会話がかけあい漫才のようでとても面白いです。これまで何回か読んでいるのですが、状況の描写がなくても会話だけで十分に作品が成立するということがあらためてわかります。漱石の筆力の成せ…

秋暑し

秋暑しは、秋になってもまだ残っている暑さのことで、俳句の季語となっています。8月の初めに立秋となり、暦のうえではこの日から秋となります。秋暑しは立秋以降に感じる暑さのことをいうのです。 この時期に感じる暑さを表す言葉には、残暑、残る暑さ、秋…

二十四節気とは何?意味と由来を解説します

昔から季節の変化を表す言葉として使われている二十四節気。春夏秋冬といった区分けでは表現できない季節の微妙な変化を示す指標として現在でも様々なところで使われています。 ところで、もともと二十四節気は農作業の指標として使われてきたことはご存知で…

葉月は何月のこと?和風月名を解説します

葉月の意味 葉月とは和風月名の1つで、旧暦8月の異名です。旧暦は新暦よりも約1ヵ月遅くなるため、現在でいえば8月の終わりから10月初めの頃をいいます。気象環境が激変している今日ではさほど実感がありませんが、本来ならば空気は澄み、ときによっては朝夕…

文月とは何月のこと?7月との違いは?

文月は「ふづき」もしくは「ふみづき」とも読まれている旧暦7月の異名です。日本では、暦で使う月の名前を数字だけではなく、折々の時節にあわせた言葉を使って表してきました。これを和風月名と呼んでいます。 文月は和風月名のうち、旧暦7月を表した言葉な…

五月闇とはどんな闇?意味を解説します

五月闇は「さつきやみ」と読み、梅雨雲に覆われた暗い日のことをいいます。梅雨空の下で感じる暗さと考えてよいでしょう。 五月闇の「五月」は旧暦でいう5月のことで、現在使われている新暦では6月にあたります。梅雨の最中で、厚い雲に覆われた暗い日が続く…

水無月とはいつのこと?意味と行事を解説します

水無月とは6月の異名です。日本では月を1月、2月といった数字で呼ぶだけではなく、季節ごとの特徴に応じた言葉で言い表してきました。たとえば、1月なら睦月、2月なら如月といった具合です。 この呼び方を和風月名といい、6月は水無月と呼ばれているのです。…

皐月とは何月のこと?意味を解説します

皐月(さつき)とは5月の異名です。日本では数字だけではなく、時候の特徴を示す言葉を使って月を表してきました。この言葉を和風月名と呼びます。たとえば、1月を睦月、3月を弥生という言葉で表しているのがそれにあたります。皐月もそのうちのひとつです。…

春爛漫とは

春爛漫とは、春になって花が咲き乱れ、あたりが明るくなる様子をいいます。爛漫だけでも同じ意味をもつのですが、そこに春という言葉が加わることによって、さらに華やかさが増す、といったところでしょうか。 春爛漫のうち、爛という文字には、色彩鮮やか、…

冴え返る

冴え返るとは、春になって暖かい日が続いた後に真冬の寒さが戻ってくることをいいます。俳句の季語の一つであり、暖かくなったり寒くなったりを繰り返す春の特徴を表した言葉として知られています。 ちなみに、冴え返るは、冴えると返るという二つの言葉が一…

重陽の節句について 意味と由来を解説

五節句の1つである重陽の節句は、上巳の節句(ひな祭り)や端午の節句のように私たちの生活になじみのある行事ではありません。 しかし、その由来を調べてみると、五節句のなかでも特に重要とされた行事であることがわかります。また、重陽の節句では霊力が…

七夕の節句 意味と由来を解説します

笹の葉に様々な願いを書いた短冊を飾る七夕祭りは、毎年7月7日に行われる年中行事として私たちの生活に根付いています。七夕祭りの由来についても織姫と彦星の伝説が有名です。 しかし、七夕祭りは七夕の節句といって五節句の1つでもあります。五節句は穢れ…

端午の節句とは何?意味と由来を解説します

男の子の健やかな成長を願う端午の節句。毎年5月5日には五月人形を飾り、鯉のぼりをたてて、家族でお祝いをする方も多いことでしょう。 けれども、端午の節句の意味はご存知でしょうか。実は、端午の節句はもともと身に付いた穢れを祓うところから始まったと…

上巳の節句とは?由来とひな祭りとの関係を解説!

上巳の節句とひな祭りとがすぐに結び付くという方は多くはないかもしれません。しかしながら、桃の節句とひな祭りならば、同じ行事だとすぐにわかる方は多いことでしょう。 実は上巳の節句も桃の節句同様、ひな祭りと同じ行事なのです。ただし、もともとは上…

人日の節句とは何か?七草粥との関係はあるのか?

人日の節句と聞いて、その意味がすぐにわかるという方は少ないのではないでしょうか。なかには、桃の節句や端午の節句というのは知っているけれど、人日の節句などは聞いたことがないという方もおいでかもしれません。 実は人日の節句とは七草粥を食べる日と…

鏡餅の鏡にはどんな意味がある?

正月の縁起物として飾られる鏡餅。年末になるとデパートやスーパーでは特設コーナーが設けられ、正月飾りの定番として売られています。 しかし、なぜ鏡餅と呼ばれるのでしょうか。正月用のお供えであれば単に餅だけでもよいと思うのですが、そこに鏡という言…

年越しの大祓とは何?夏越しの祓との関係は?

年越しの大祓は毎年12月31日に全国の神社で行われる行事です。身についた罪や穢れを払い、新年を新たな気持ちで迎えるために行なわれるものとされています。 これと似た行事に夏越しの祓があります。こちらは毎年6月30日に行われる行事で茅の輪くぐりが有名…