初冬の候、という言葉は手紙を書く際にはよく使われますよね。この初冬は文字通り冬の初めという意味ですが、いつまで使われるのかご存知でしょうか。
感覚的には12月初旬ころぐらいかな、とも思えますが実際にはどうなのか。
また、同じ時期に使われる言葉に晩秋や冬隣といったものもあります。それらの言葉との違いも気になります。
そこで、ここでは初冬の期間と似た言葉との違いについて解説していきます。
初冬の期間
初冬と呼ばれる期間は24節季でいえば11月初旬の立冬から12月初めの大雪の時期までとされています。
気象庁のホームページによると冬の始まりは12月からです。しかし初冬という言葉は12月になってから使われるのかといえば、そうではありません。立冬を迎える11月初旬ころから使われ始めるのが一般的です。
なぜ実際の冬よりも早い時期から初冬という言葉が使われるのでしょうか。
大きな理由は初冬という言葉が旧暦時代から使われてきたことです。そのため、11月で実際にはまだ冬になっていなくても初冬という言葉を使うことに抵抗感がないのでしょう。
新暦と旧暦とでは暦の数え方が違います。月の動きを中心とした旧暦と太陽の動きを中心にした新暦では暦の数え方が異なり、約1ヵ月程度のずれが生じるのです。そのため新暦12月が旧暦では11月となります。冬の始まりが新暦のほうが遅くなるわけです。
旧暦が新暦に変わったのは明治5年12月3日からです。この日をもって新暦の明治6年1月1日とし、新しい暦が使われるようになりました。しかし、変わったのは暦の使い方だけでそれまで行われてきた季節ごとの行事はそのまま残されました。
そのため、暦上はずれがあっても季節のとらえ方はそのまま残り、実際に冬になっていなくても冬を表す初冬という言葉が使われているのです。
そこで問題となるのは初冬の時期はいつまでか、という点。こちらについては厳密にこの日とまでは決まっていません。冬の初めを過ぎた頃、というしかないようです。しかし、一応の目安となる日はあり、それが冒頭に述べた24節季の1つである大雪になるといわれています。
大雪は新暦12月8日頃にあたり、本格的な冬の寒さがやってくるとされる日のことです。俳句の季語にもなっています。初冬は本格的に寒くなる前の一時期を表している言葉なのです。
晩秋との違い
初冬と同じような時期に使われる言葉に晩秋があります。陽の光も弱くなりなんとなく肌寒さを感じる時候、といったイメージを喚起させる言葉です。肌感覚としては初冬と似ていますし、実際に初冬と同じく11月の終わりから12月の初めまで使われることもあります。
このことから、両者は言い方が違うだけで表している意味は同じと考える人がいるかもしれません。
しかし、両者には明確な違いがあります。それは季語としての使われ方に現れます。歳時記では晩秋は秋の部に収められており、俳句の世界では原則として秋以外の季節で使われることはありません。
一方の初冬は冬の季語。こちらも使われるのは冬のみです。俳句では季語に様々な意味を含ませるため、使用する時期に厳密な制約をもたせています。そのため、感覚からすれば同じ時期に使う言葉であっても俳句で使う場合には厳格に建て分けられているのです。
晩秋のほかに暮れの秋、冬隣などといった季語があります。いずれも晩秋から初冬の時期に使われる言葉です。日常会話で使う分には問題はありません。しかし俳句にする場合にはあくまでも秋の言葉として使わなければならないのです。
まとめ
初冬は暦上の冬が始まる時期から寒さが本格化する時期まで使われる言葉です。季節でいえば秋の終わりから冬の始まりまでといえるでしょう。
小春日和もこの期間に使われる言葉です。暑くもなく寒くもない束の間の過ごしやすい時候ですね。また、晩秋がどちらかというと暗く重苦しいイメージがあるのに対して明るい陽射しが満ち溢れているような軽やかな感じのする季節といえるのではないでしょうか。