古くから日本人は月の名前をその季節に応じた呼び方で呼んできました。それを和風月名といいます。
睦月、如月、弥生といった呼び方がそれにあたります。普段はさほど使う機会がないので、すべての呼び方をご存知の方は多くないのではないでしょうか。
実は和風月名は旧暦の異称です。旧暦でも2月、3月など、月を数字で呼んでいたようですが、日本ではこの他に月を表す言葉として和風月名が使われていました。
和風月名が表す季節感が日本人の生活感覚と合致していたため、数字で表される月名とは別に昔から使われてきたといわれているのです。
ここでは、和風月名について解説していきます。
和風月名とは何か
和風月名は既述の通り、旧暦で使われてきた月の異称です。そのときどきの季節や行事を表す言葉として数字の月名とは別に使われてきました。
しかし、明治6年に新暦が導入されてからは、和風月名の表す意味が新暦との間でずれを生じることが多くなりました。それまで使われていた旧暦は月の満ち欠けに太陽の動きを加味して作られた暦であり、現在使われている太陽暦とは1、2ヵ月ほどのずれがあるのがその理由です。
たとえば、和風月名のうちの弥生といえば、新暦では3月を意味し、まだ寒い日が続きますが、旧暦では新暦上の3月下旬から5月上旬頃。すでに寒さも終わっていて、草木が生い茂る初夏に入っています。
弥生の意味は草木が生い茂る月とされており、旧暦ならば季節の進行とぴったりと合った言葉ということがわかります。しかし、新暦ではまだ春なかば。かなりの違いがあるのです。
事ほど左様に、和風月名と現在使われている新暦との間にはずれがあります。しかし、どれでもなお、和風月名はおりにふれて使われ続けているのです。使う暦は違っても日本人の美意識は変わらない、というべきなのでしょうか。
和風月名の月ごとの名称と意味
和風月名の月ごとの名称と意味は次の通りです。ただし、和風月名には様々な由来があり、ここではそのうちの代表的なものを紹介します。
1月 睦月(むつき)
正月に親族一同が集まって仲睦まじく過ごすところから呼ばれる。
2月 如月(きさらぎ)
寒さをしのぐために衣をさらに着るところから呼ばれる。その他に生更木の字をあてて草木が生え始めるときという意味があるともいわれている。
3月 弥生(やよい)
草木が生い茂る時期という意味で呼ばれている。
4月 卯月(うづき)
卯の花が咲く時期という意味でいわれている。新暦では卯の花が咲く時期は5月から6月。
5月 皐月(さつき)
田に早苗を植える月という意味からいわれる。
6月 水無月(みなづき)
田に水を引く月という意味で水無月と呼ばれる。水無月の無は「~の」という意味で水の月を表す。その他に、文字通り水が無い月という意味もあるとされている。
7月 文月(ふみづき)
稲穂が実る月(穂含月:ホフミヅキ)というところから文月と呼ばれるようになったとされる。この他に、七夕にちなんで書道上達のため短冊に文字を書く行事が行われた文被月(フミヒロゲヅキ)から呼ばれるようになったともいわれている。
8月 葉月(はづき)
旧暦の8月では、すでに秋に入っており、樹々の葉が落ち始める時期とされるところから葉月と呼ばれる。
9月 長月(ながつき)
新暦では10月の初旬から11月初旬にあたる。すでに秋分の日を過ぎており、夜が長くなるところから夜長月と呼ばれ、それが転じて長月となったといわれている。
10月 神無月(かんなづき)
10月は年に一度、出雲大社に全国の神々が集まる月とされ、出雲地方以外には神がいなくなるため神無月と呼ばれるようになったとされる。ちなみに出雲地方では神在月と呼ぶ。
11月 霜月(しもつき)
新暦では12月初旬から1月初旬の時期にあたり、霜が降り始めるところから霜月と呼ばれるようになったとされる。
12月 師走(しわす)
師である僧侶が法要のため、走り回るという意味で師走と呼ばれるようになった、というのがもっとも有名な説。師には僧侶の他に御師と呼ばれる神社で参拝者の世話をする人や、学校の先生なども含まれるとされている。
まとめ
和風月名は、もともとは古代中国から伝わったとされていますが、正確なところはわかっていません。しかし、日本人は季節の行事にあわせる形で言葉を作り出し、使ってきました。月の呼び方を単に数字で数字で表すだけではなく、詩として残したといってよいかもしれません。