初春と晩春はよく聞く言葉です。初春は春の始めというよりも正月を表す言葉として使われることが多いですし、晩春は映画や文学作品の題名などに使われています。
これに対して仲春という言葉が使われる場面はあまり多くはありません。そのせいか、仲春は初春や晩春に比べて幾分地味な感じを与える言葉です。しかし、言葉の意味を考えてみると意外なことがわかります。
ここでは、仲春の意味と使われる時期、さらには使われ方について解説します。
仲春の意味
仲春は春の真ん中にあたる時候をいいます。
日本人は1つの季節をさらに3つに分けることで季節の移ろいを表現してきました。春でいえば、初春、仲春、晩春の3つです。仲春はこのうちの真ん中、春たけなわといった時期を指します。
梅の花が終わり、桃や桜が満開となる季節です。この他にも沈丁花や椿なども咲き始め、花の香りととりどりな色で街が華やいでくる季節ともいえるでしょう。
仲春が使われる時期
仲春の時期は24節気でいえば、3月初めの「啓蟄」から4月初めの「清明」までの約1ヵ月です。
この時期に行われる主な行事が春の彼岸です。暖かな陽光のもと、墓参りに出かける家族連れが多くみられます。また、桜の満開時期にもあたるため、花見にも絶好のシーズンです。
仲春の使われ方
仲春の使われ方としてもっともポピュラーなのは、手紙の書き出しです。「仲春の候、~」
といったものが代表的なものとなります。
この他には俳句の季語としても使われます。興味深いのは歳時記の「春」の部には傍題として「春なかば」の他に「春めく」という言葉が載っており、仲春が春の真ん中といってもその守備範囲は意外と広いことに気がつきます。
「冴返る」という季語があります。春になって暖かな日が続いている最中に、急に冬に舞い戻ったかのような寒さに襲われるときがあり、そのことを表現した言葉です。仲春とはその様な状況をも含んで使われているようです。
春たけなわ、とはいってもいまだ冬の影を引きずる季節を指す言葉として使われるのが仲春といえるかもしれません。
まとめ
仲春は、春を表す初春や晩春といった言葉よりも目立つことの少ない言葉です。しかし、季語の使い方をみてわかるように寒い冬の意味と、ときとして汗ばむほどの暑ささえ感じる春の意味とを含む幅広さをもった言葉でもあります。
使う機会は少ないですが、移ろう季節の状況を内に秘めた言葉として大切にしたいものです。