季節の言葉

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八十八夜の忘れ霜とは?意味と発生の原因を解説!

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夏も近づく八十八夜・・・

 

明治45年に発表された唱歌「茶摘み」の歌いだしの言葉としても知られる八十八夜は立春から数えて八十八日目のこと。新緑が萌え茶の新芽が摘み頃となる時期です。

 

昔からこの時期に摘まれた新茶は体に良いとされ、茶の産地ではお茶に関する様々なイベントが行われています。

 

しかし、そんな八十八夜に用心しなくてはいけないのが八十八夜の忘れ霜。暖かくなったこの時期に急に霜が降りてせっかくの茶の新芽がだめになってしまうことがあるからです。

 

ここでは八十八夜の忘れ霜の意味と原因について解説していきます。

 

八十八夜の忘れ霜の意味

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八十八夜の忘れ霜とは、暖かくなり夏も近くなった時期に降りる霜のことです。

 

八十八夜は、日本人が古代中国を起源とする二十四節気のほかに、主として農作業の目安として考え出した雑節の1つで、毎年5月1日ないし2日頃にあたります。

 

この頃になると暖かくなり、苗代づくりや畑作物の種まきといった農作業が始まります。茶の新芽の摘み取りも始まる時期です。

 

一方でこの時期の天候はまだ安定しておらず、時として霜が降りるほどの寒さに見舞われることがあります。霜が降りるとせっかく育った農作物が大きな被害を受けてしまいます。そのため、暖かくはなったけれど、まだまだ用心をする必要がある、というところからいわれるようになったのが八十八夜の忘れ霜という言葉です。

 

同じ意味で「八十八夜の別れ霜」という言葉も使われています。

 

原因は移動性高気圧による放射冷却

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八十八夜の忘れ霜が降りる原因は、移動性高気圧によって引き起こされる放射冷却現象によるものです。

 

移動性高気圧とは春と秋に大陸から偏西風に乗って日本列島にやってくる高気圧のこと。偏西風に押されて動くため一か所にとどまらず、文字通り日本列島を西から東へと移動していくのが特徴です。

 

また、放射冷却現象とは、昼間、太陽によって温められた地表の温度が夜間には下がっていくことをいいます。

 

地球は太陽光による熱を吸収しますが、その一方で吸収した熱を宇宙空間に放射しています。熱の吸収と放射を絶えず行うことで地表面の温度のバランスを維持しているのです。ただし、そのバランスは昼間と夜間では違っています。

 

すなわち昼間は太陽光によって熱を吸収する力が強く地表は温められます。しかし、夜間は太陽光がない分、熱を放射する力のほうが強くなります。そのため、夜間には温度が下がっていくのです。

 

さて、八十八夜の頃は移動性高気圧によって晴れの日が多く、太陽の光によって昼間は暖かくなります。しかし夜になると太陽がなくなるため、地表が冷え気温が下がっていきます。また、晴れているため雲が少なく熱の放射がさまたげられることはありません。上空の雲は地表の熱をにがさない役割をしており、雲がなければ地表の熱が上空へとにげていくため、地表の温度は下がっていくのです。

 

さらに、大陸からやってくる移動性高気圧は乾燥しています。空気が乾燥していると雲と同じ働きをする水蒸気が少ないため、熱はそのまま放射されていき、地表の温度は下がります。

 

このようにしてできた冷たい空気は上昇することなく地表にたまっていきます。このとき、風が吹かなければ冷たい空気がかきまぜられることなく、さらに温度は下がります。このときの温度が3°cを下回ると霜が降りるのです。

 

温度は地上1.5mの場所で計るので、3°c以下であれば地表面は0°となっている可能性が高くなります。そのため、この温度になると霜が降りる可能性も高くなるのです。

 

これが八十八夜の忘れ霜の発生する原因となります。

 

まとめ

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気象庁では春と秋に霜注意報を出して警戒を呼び掛けています。いずれの季節も油断をすると霜によって農作物に大きな被害が出るおそれのある時期だからです。霜注意報などというものがなかった時代、日本人は八十八夜の忘れ霜という言葉を使うことで大切な農作物を霜の被害から守ってきたのでしょう。