季節の言葉

四季折々の言葉や行事を綴っていきます

雑節とは何か?意味と成り立ちを解説します

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日本の四季を表す言葉として二十四節気が有名です。しかし、この他にも八十八夜や二百十日、さらには入梅という言葉がそのときどきの季節を表すものとして使われています。

 

実は、これらの言葉も二十四節気と同じく四季の移り変わりを示すものとして同一のカテゴリーにまとめられているのです。このカテゴリーの総称を雑節と呼びます。日本人は二十四節気以外にも季節の変化を示す言葉を使ってきたのです。

 

ここでは、雑節について意味と種類、さらには成り立ちを解説していきます。

 

雑節の意味と種類

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雑節とは、農作業の指標として二十四節気の他に考えられた節気のことです。有名なものに八十八夜、二百十日などがあります。

 

太陽の動きをもとに考えられた二十四節気は、農作業の指標として使われているのですが、もともとは中国で考案された暦です。中国と日本では気候が違うため、そのままでは使い勝手がよくない点がありました。

 

そこで、二十四節気では足りない部分を補う形で作られたのが雑節なのです。

 

雑節には次のように9つの種類があります。

 

節分・彼岸・社日・八十八夜・入梅半夏生・土用・二百十日・二百二十日

 

これらのうち、国立天文台が発行している日本の公式な暦である暦象年表に記載されているのは「社日」と「二百二十日」を除いた7種類です。

 

雑節の成り立ち

ここからは「社日」と「二百二十日」を除いた雑節の成り立ちについて解説していきます。

 

節分

節分には季節を分けるという意味があります。そのため、二十四節気立春立夏立秋立冬の前日が節分とされています。しかし、立春前日の節分は一般的に使われていますが、その他の節分が意識されることはほとんどありません。

 

その理由として、旧暦の立春新暦の正月にあたり、その前日の節分は、いうならば大晦日であったところから1年のうちでも歳が改まる特別な日とされてきたことがあげられます。

豆まきや柊鰯を飾るといった風習は、邪気をはらい新しい年を迎える行事として行われてきたのです。

 

立春前日の節分以外に行われる行事はなく、このことも他の節気の節分が意識されなくなった原因といえるようです。

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彼岸

彼岸は先祖を供養する日であり、自身が悟りを得るための修行の時期といわれています。

 

もともと、なくなった先祖が住む場所を彼岸といいました。これに対して生きている私たちが住む場所は此岸と呼びます。

 

仏教では、春分秋分の両日は昼と夜の時間が同じであるところから、彼岸と此岸とが通じやすくなるといわれています。そのため、彼岸とは先祖を供養する日とされたのです。

 

また、彼岸の時期は春分の日秋分の日を真ん中にした前後7日間です。彼岸の初日を彼岸の入り、真ん中を彼岸の中日、最後の日を彼岸明けと呼んでいます。このうち、彼岸の中日は先祖を供養し、それ以外の日は自身が悟りを得るための修行にあてるというのが本来の彼岸の過ごし方だったのです。

 

八十八夜

八十八夜とは、遅霜に注意を促す日です。

 

立春から数えて八十八日目の夜を八十八夜と呼んでいます。この時期は放射冷却の影響で早朝、霜が降りることがあります。これを八十八夜の忘れ霜と呼んで、昔から農作物が被害を受けないように注意してきたのです。

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入梅

入梅とは、暦上の梅雨入りのことです。実際の梅雨入りは各地域の気象状況によって決まりますが、昔は農作業の指標として暦のうえで梅雨入りの時期を決めていました。これを入梅と呼ぶのです。

 

半夏生

半夏生とは、田植えを終えなければならないとされていた時期のことです。具体的には夏至から数えて11日目にあたる7月2日頃から7月7日までの5日間をいいます。

半夏生までに田植えを終えることができないと、その年の収穫が減ってしまうとされていました。また、半夏生の期間は、働いてはならないとされ、様々な禁忌がありました。たとえば、この時期は空から毒が降るので井戸には蓋をする、また、この時期に収穫した野菜は食べてはいけない、などとされたのです。

 

半夏生には農作業を終える目安としての意味があり、それを守らせるために様々な禁忌がいわれるようになったのでしょう。

 

土用

土用とは陰陽五行説に由来する言葉で、土は種子を発育させるところから物事の変化を促すとともにその変化を保護する働きがあるとされました。

 

陰陽五行説では春は木、夏は火、秋は金、冬は水といった具合にそれぞれの季節を象徴する気をわりあてています。土は物事の変化を促す気とされるところから、これらの季節の変わり目を示す象徴とされるようになっているのです。

 

そのため、古くから立春立夏立秋立冬となる18日前を土用の入りと呼び、季節が変わる目安としてきました。ちなみに土用の最後の日が節分です。

 

現在では土用といえば夏にだけあるものと一般的には考えられていますが、本来は春夏秋冬すべての季節にあるものだったのです。

 

二百十日

二百十日とは立春から数えて210日目となる日のことです。この時期は台風がやって来る季節で農作物への被害が心配されます。特に稲の開花期と重なるため、農家では厄日として警戒されてきました。ちなみに雑節には二百二十日という節気もありますが、こちらも意味は同じです。ただし、台風による被害という視点からいうと二百二十日のほうがより深刻になるといわれています。

 

まとめ

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雑節は、直接農作業の指標とされるものと、季節の変化を表すものとに分けることができます。八十八夜、入梅半夏生二百十日は前者に、節分、彼岸、土用は後者にあたるものといえるでしょう。

 

また、雑節のなかには節分や彼岸など季節を彩る国民的な行事として今でも続けられている行事がある一方で、名前だけになってしまっているものもあります。時代とともに行事も薄れていくのは仕方のないことですが、その行事に込められた先人のこころは大切にしていきたいものです。