季節の言葉

四季折々の言葉や行事を綴っていきます

入梅と梅雨入りに違いはあるのか?

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毎年5月の終わりから6月にかけて日本では梅雨の時期に入ります。早いところでは5月半ばには既に梅雨入りする地域もあります。

 

ところで、梅雨に入る時期のことを入梅ともいいます。梅雨入りと入梅はともに同じ意味をもっているように思えますが、本当はどうなのでしょうか。

 

実は、梅雨入りと入梅は本来、違う意味をもった言葉なのです。

 

ここでは、そんな梅雨入りと入梅について解説します。

 

入梅とは何?

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入梅とは雑節の1つで、暦のうえで梅雨に入る日のことをいいます。あくまでも暦上の目安であり、実際の気候とは関係はありません。

 

雑節とは二十四節気以外に農作業の指標とされてきた節気のことで、八十八夜や二百十日などがあります。入梅もそのうちの1つで、二十四節気のなかの芒種初日から5日目とされています。芒種の初日は毎年6月6日頃とされているところから、入梅は6月11日頃となります。

 

農作業、特に稲作を行うにあたって梅雨入りの時期がいつになるのかは、とても重要なことでした。そのため、入梅という節気を決めることで農作業の目安としたのです。

 

梅雨入りとは何?

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梅雨入りとは、実際に梅雨の時期に入ることをいいます。ただし、梅雨入りには決まった定義はありません。過去の観察記録をもとに今後の週間天気予報などを考慮して決められているのです。そのため、梅雨入り宣言が出された後も、実際の天候の状況によっては宣言の日が変動することがあります。

 

日本列島は南北に細長いので、梅雨入りの時期も地域によって異なり、場所によっては1ヵ月程度の開きがみられます。

 

入梅と梅雨入りの違い

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入梅と梅雨入りには、前者が暦上で決められたもの、後者が実際の気象観測によって決まるものといった違いがあります。

 

入梅は日本人が農作業の指標として使ってきた雑節の1つであり、必ずしも現実の気象に則したものではありません。それに対して梅雨入りは気象庁の観測によって決められる実際の梅雨の始まりをいいます。

 

そのため、気象庁では入梅については使用を控える用語としており、梅雨の時期に入ることを梅雨入りとしています。なお、手紙の書き出しにある時候の挨拶のように季節の情感を表す場合には入梅を使うことが多いようです。

 

まとめ

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入梅は昔から梅雨に入る時期を表す目安として使われてきました。あくまでも目安であって厳密なものではありません。そのため、正確さが要求される現代社会では気象用語としては使われておらず、それに代わる言葉が梅雨入りなのです。

 

しかし、入梅は日常の挨拶などで頻繁に使われています。気象用語というよりは季節の変化を表す言葉として社会に定着しているのが入梅ということができるでしょう。