季節の言葉

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半夏生とは何か?意味をわかりやすく解説!

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半夏生は雑節の1つで梅雨明けから本格的な夏に向かう時期を表した言葉です。半夏生(はんげしょう)と読みます。あまり一般的に使われる言葉ではないので、名前だけは知っていても詳しい意味まではちょっとわからない、という方は多いかもしれません。

 

実は半夏生とは季節の変化だけではなく、同じ名称の植物を指す言葉としても使われています。ドクダミ科の多年草植物として知られる半夏生がそれです。

 

ここでは、1つの言葉にいくつもの意味が含まれる半夏生について解説します。

 

半夏生の意味

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半夏生という言葉は、雑節、七十二候、植物といった3つのカテゴリーに分けて使われています。

 

雑節

半夏生は雑節の1つです。雑節とは農作業の指標とされる二十四節気の足りない部分を補うために作られた日本固有の暦のことです。

 

二十四節気夏至から数えて11日目を半夏生と呼んでいます。7月2日から7月6日頃までがその期間とされていますが、二十四節気を基準にしているので毎年日取りが決まっているわけではありません。

 

半夏生の頃は梅雨明けも近い時期で、昔から半夏生の日までに田植えを終わらせなければならないとされてきました。もし、田植えが終わらなければ、その年の収穫が減ってしまうといわれていたのです。

 

現代のように機械化が進んでいなかった時代、田植えには時間がかかっていました。もしも、決まった時期までに田植えが終わらなければ、次の作業の取り掛かることができず、結果として収穫が減ってしまうということがあったのでしょう。

 

また、先述したように梅雨明けにあたるこの時期は大雨が降るときでもあります。このときに降る雨のことを半夏雨(はんげあめ)と呼んでいます。

 

七十二候

半夏生は七十二候の1つでもあります。七十二候とは二十四節気を節気ごとにさらに細かく3つに区分したものです。1つの候は5日間で、半夏生の場合は雑節の日取りと同じく7月2日から6日までがそれにあたります。

 

言葉の意味は雑節でいう半夏生と変わりはありません。しかし、字の読み方が違っており、こちらは(はんげしょうず)と読みます。

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植物

半夏生には先述したとおり同名の植物があります。花をつける時期が半夏生と重なるだけではなく、その頃になると葉が半分ほど白くなる習性があり、そこから半化粧と呼ばれ、転じて半夏生となったという説がある植物です。

 

また、半夏という名前の植物もあります。こちらは正式には、カラスビシャクと呼ばれるサトイモ科の植物です。薬用の効果があり、漢方の生薬として有名です。

 

半夏生の風習

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半夏生の風習には、禁忌とされることとこの時期に食べる物の2つがあります。

 

禁忌

半夏生の日は天から毒が降ってくると考えられていました。そのため、その日は井戸に蓋をして井戸水を飲まないようにすることが行われていました。また、半夏生の日に採った野菜は食べないともいわれています。さらには、三重県の一部の地方ではハンゲという名の妖怪が徘徊するとされ、その日は外出を控えるといったことも行われたようです。

 

これらの禁忌は激しい農作業で疲れた体を休めるために考えられたものとされています。

 

食べ物

半夏生にはタコを食べる、というのが関西地方を中心に行われている風習です。タコが8本の足にある吸盤でものに吸い付くところから、半夏生までに植え終えた苗が田にしっかり根付くようにとの願いをこめて食べられてきたといわれています。

 

まとめ

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半夏生について解説してきました。半夏生は田植えを終える時期の目安として用いられ、その後は疲れた体を強制的に休ませるために様々な禁忌が考え出された節気です。また、季節の変化だけではなく、同名の植物もあります。

 

半夏生は日常的に使われているわけではありませんが、豊かな意味が含まれた言葉ということができるでしょう。