五月闇は「さつきやみ」と読み、梅雨雲に覆われた暗い日のことをいいます。梅雨空の下で感じる暗さと考えてよいでしょう。
五月闇の「五月」は旧暦でいう5月のことで、現在使われている新暦では6月にあたります。梅雨の最中で、厚い雲に覆われた暗い日が続く時期です。現在とは違い、満足な灯りのなかった昔は夜ともなると月明りだけが頼りでした。しかし、梅雨時には月も雲に隠れてしまい、夜間は文字通り漆黒の闇に包まれてしまったことでしょう。
五月闇はそんな頃の暗さを表す言葉なのです。
また、五月闇は梅雨雲に覆われた地域全体だけではなく、ある特定の場所の暗さを表す言葉としても使われてきました。
みほとけの千手犇く五月闇 能村登四郎
という俳句では、仏像が安置されている空間の暗闇を五月闇と表現しています。こちらなど、特定の場所の暗さを表現したものといってよいのではないでしょうか。ただ、こちらは漆黒の闇ではなく、仏像を包む小暗さを五月闇と詠んでいます。
梅雨時に感じる暗さといってもいくつもの段階があって一律に決められるものではありません。五月闇はそれらすべてを含んだ言葉なのです。