初春は正月に使われることが多い言葉です。しかし、立春以降を時期ごとにわけた初春、仲春、晩春といわれる三春のうちにも入っており、春の始まりを表す言葉としても使われています。なぜこのような使い方をされているのかご存知ですか。
また、早春は春が始まる時期を意味する言葉ですが、初春とは何が違うのでしょうか。
実は、初春は暦のあり方によって使われる時期と意味が二つに分かれてしまった経緯をもっています。これに対して早春は変化する季節を表すのみの言葉です。
春の始まりにはどちらを使ってもよいのですが、初春は正月をも連想させるので少々紛らわしいかもしれません。
ここでは、初春と早春の違いについて解説します。
初春の意味と使い方
一般的に初春は正月を意味します。歳時記の新年の部には、正月を表す言葉として、新春や迎春、明の春、今朝の春などが載っています。いずれも年が明けためでたさを示すために「春」の文字が使われているのですね。
これはもともと、正月を祝ったのが1月の終わりから2月の終わりにかけての頃だったことの名残だといわれています。旧暦が使われていた時代、正月は実際の春の始まりにあたる時期と重なっていたのです。
そのため初春といえば正月を指す言葉といわれてきたようです。それが明治時代になって新暦が使われるようになってもそのまま残ったのでした。すなわち、実際の季節とは関わりなく、正月行事を意味する言葉として使われてきたのです。
一方、初春は肌感覚でいう季節を表す言葉としても使われています。既述した通り、季節の進み具合を3つに分けた三春の始めにくるのが初春です。歳時記の春の部にも初春が登場します。
歴史的な経緯のうえから決められてきた暦上の春と、季節のうえでの春が別々の意味で使われているのが初春なのですね。
早春の意味と使い方
早春は文字通り、春の始まりのころの季節をいう言葉です。使われる時期としては2月初めから3月初めといわれています。歳時記には2月いっぱいまで、とも書かれています。
いずれにせよ、立春も過ぎ、暦のうえでは春が立っているけれど、まだまだ寒い日が続いている時期です。時折、陽の光や吹く風に暖かさを感じることがあっても、すぐにもとの寒さに戻ってしまう。そのような時期を表しているのです。
同じ時期を表す言葉に「春浅し」というものがありますが、こちらは早春よりも、使われる期間が少し長いとされているようです。また語感も柔らかく、早春が硬い氷だとすれば、春浅しはそれが少し緩んで融け始めたところといったイメージでしょうか。
立春を過ぎてからまだ日も浅く、寒風が吹きすさぶなかを身を縮めて歩く時期に使う言葉が早春といえるでしょう。
初春と早春の違い
初春は旧暦から新暦へと暦の扱い方が変わったことによって、新年と春との2回に分けて使われることとなった言葉です。
歳時記の新年の部で使われる初春は、気候を表す言葉ではありません。正月のめでたさを示した言葉なのです。一方、春の部で使われる初春は気候を表しています。
初春は正月行事と気候変化の二つの意味をもった言葉であり、これに対して早春は変化する気候を表す言葉です。両者の違いはこの点にあります。
まとめ
旧暦で使われていた言葉が、新暦になってもそのまま使われ続けることで、二つの違った意味をもつようになる。初春はそのような言葉の一つといえるでしょう。
季節の変化でいえば、初春も早春も同じ時期に使われる季語として歳時記に載っています。しかし、早春のほうが使われる頻度は高いようです。初春が正月と同じ意味で使われることのほうが一般的となっているからかもしれません。