啓蟄は「けいちつ」と読み、二十四節気の春の部にある言葉です。春の初めで、まだ寒さも残っていますが、冬の間いなかった虫の姿をちらほら見かけるようになる頃とされています。
また、松の木に巻かれた菰を外すときであり、さらには春を告げる雷、「春雷」が鳴る時期にもあたります。
本格的な春の到来を間近に控えた時期が啓蟄ということができるでしょう。
ここでは、そんな啓蟄について解説します。
啓蟄はいつ?
啓蟄は毎年3月5日から3月19日頃までとなります。ただし、日付が特定されているわけではなく、年によって1日ないし2日程度ずれることがあります。その理由は、二十四節気の決められ方によるものです。
二十四節気とは、太陽の動きを基に農作業の指標となるように考えられた暦のことをいいます。春夏秋冬の4つの季節をそれぞれ6等分して全体を24に分け、それぞれに名前をつけて、日々の暮らしの指標としたのです。
二十四節気は太陽の動きを基準にして作られた暦であるため、その日取りには毎年いく日かのずれが生じます。啓蟄の日取りもそのずれに応じて決まるため、日付が決まっていないのです。
春の部は、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨の順に並んでおり、啓蟄はそのうちの3番目となります。
2024年の啓蟄は、3月5日から3月19日までです。
啓蟄の意味
啓蟄には虫が地面から出てくる、という意味があります。
「啓」は開く、「蟄」は土中にいる虫、という意味があり、両方が合わさって地中にいる虫が地表に出てくるという言葉になるのです。なお、ここでいっている虫は昆虫だけではなく、ヘビやトカゲといった爬虫類も含まれます。
昔の日本では、虫といえば、鳥や獣、魚以外の小動物のことをさしていました。冬の間、地中に隠れてきたそれらの虫が暖かくなると地表へと姿を現す、そんな時期を啓蟄という言葉で表したのです。
啓蟄の行事
啓蟄といっても何か特別な行事が行われることはありません。ただ、この時期には春の風物詩として行われる菰外しや、春を告げる春雷という気象現象が見られます。
菰外し
菰外しとは、初冬の頃、害虫予防のために松の幹に巻かれた菰を春になってから外すことをいいます。菰とはわらで作られたむしろのことです。これを冬の初めに松の幹の高さ2mほどのところに巻き、春になってから外して焼き払います。
冬、枯葉の間に身をひそめる虫の習性を利用して、松の幹に巻いた菰に害虫を集め、啓蟄の時期に菰ごと燃やしてしまうことで駆除を行うのです。
しかし、菰のなかには害虫だけではなく、益虫もいるため害虫駆除の効果はあまりないとされています。そのため、現在では春の風物詩として行っているところが多いようです。
なお、自治体のなかには、菰を外したときに害虫と益虫とを分け、害虫のみを残して焼き払うといった方式で行っているところもあります。
春雷
春雷とは春になってから鳴る雷のことです。冬は天気が安定していて晴れた日が多いのに対して、春になると低気圧の影響で雨の降る日が増え、同時に積乱雲が発生します。その際に雷が鳴るのです。春の訪れを告げる雷といえるでしょう。
春雷が多くみられるのは啓蟄の頃で、この時期に鳴る雷のことを虫出しの雷と呼びます。
また、春雷はひょうを降らせることがあるため、農作物に被害が発生するおそれもあります。
まとめ
啓蟄について解説してきました。
虫が姿を現す時期ともなると肌感覚としての春が身近に感じられるようになります。まだまだコートは手放せませんが、本格的な春を間近にして何となくうきうきとした気分になる頃といえるかもしれません。