酉の市とは何か?意味と由来を解説します。
毎年、11月に行われる酉の市は商売繁盛を願う行事として知られています。福をかきこむとされる熊手が買われると威勢の良い掛け声とともに行われる手締めは、酉の市のにぎわいを象徴するものです。
けれども、酉の市の由来はごぞんじでしょうか。また、そもそも酉の市の「酉」とは何を意味しているのでしょうか。
ここではそんな酉の市の意味と由来を解説します。
酉の市の意味
酉の市とは毎年11月の酉の日に全国の鷲神社で商売繁盛を願って行われる行事のことをいいます。
酉の日とは十二支をもとにした日の数え方です。十二支とは「子」「丑」「寅」「卯」「辰」「巳」「午」「未」「申」「酉」「戌」「亥」の12から成ります。陰陽五行説で時間や方位を表す言葉として使われており、日の数え方もそれに基づいています。
すなわち「子」の日から始まって12日目となる「亥」の日で1つのサイクルが終わり、次の「子」の日から再び次のサイクルが始まるとされているのです。そこで「酉」の日も12日ごとにめぐってくることとなります。
酉の市は11月に12日ごとにめぐってくる「酉」の日に行われる行事のことなのです。よく「一の酉」「二の酉」「三の酉」といわれますが、これは11月にくる酉の日の数をいいます。酉の日の日取りは毎年変わるため、3回目の酉の日、いわゆる「三の酉」は必ずしも毎年あるわけではありません。
年によっては酉の日が2回しかないときもあるのです。「三の酉」のある年は火災が多い、などといわれますが、これは酉の日が3回ある年に使われるのです。ちなみに「三の酉」のある年と火災件数との間には何の関係もありません。
2022年の酉の市は、三の酉まであります。すなわち、一の酉が11月4日(金)、二の酉が11月16日(水)、三の酉が11月28日です。
酉の市の由来
酉の市の由来は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東国を平定したときに鷲神社で戦勝を祝った日が11月の酉の日であったところから始まったものとされています。
また、鷲神社が商売繁盛の神様とされるようになったのは、天の岩戸の神話からきています。天の岩戸に隠れた天照大神が再びその姿を現したときに、宴を開いていた神々の1人がもっていた楽器の先に1羽の鷲がとまりました。その様子がめでたいこととされ、楽器をもっていた神様は名前に鷲の字を付けて鷲大明神と呼ばれるようになりました。この神様を祀ったのが鷲神社であり、開運や商売繁盛といったご利益があるとされたのです。
当初、11月の酉の日に行われていたのは祭りで「酉の祭」(とりのまち)と呼ばれていました。やがて、この日にものが売られるようになり、市が立ったところから呼び名も「酉の市」と変わっていったのです。
酉の市の縁起物
酉の市の縁起物として有名なのが熊手です。熊手はその姿から福をかきこむとされ、指物と呼ばれる縁起物が飾り付けられています。指物にはお多福の面、鯛、蕪などがあり、それぞれに意味があるとされています。その中の1つ、桝には「ますます」商売が繁盛するといった意味があるそうです。
熊手を買う際には、小さなものから始めて年とともに大きなものを買っていくというのがよいといわれています。年々商売も大きくなっていくようにとの願いがそこにはあるとされているからです。
ただし、あくまでも縁起物なので、必ずしも大きさにこだわることはないともいわれています。大切なことは自分が気に入るか否かですからね。
まとめ
酉の市とは、十二支に由来する「酉の日」と鷲大明神への信仰とが日本武尊の戦勝祝いによって結びついたところに成立したものといってよいでしょう。
なお、酉の市を「お酉さま」と親しみをこめて呼ぶこともあります。酉の市は、年の暮れを迎えるにあたって良き運を招き寄せたいという庶民の思いが込められた行事といってよいかもしれません。