花曇りという言葉からは華やいだイメージを連想します。曇り空ではあっても、地上では何となく明るい雰囲気が漂っているといった感じでしょうか。
実は花曇りとは、厚い雲に覆われた曇天を指していう言葉ではありません。同じ曇天でも薄雲がかかった時折日が差す明るい日に使われる言葉なのです。陽の当たらない暗い日には使われないのですね。
ここではそんな花曇りの意味や使われる時期について解説します。
花曇りの意味
花曇りとは、桜の咲く時期の日差しのある明るい曇り空のことをいいます。
花曇りの花は桜のことです。日本では平安時代以降、花といえば桜を指すものといわれてきました。
いくつか理由はあるようですが、遣唐使が廃止されたことによってそれまでの中国に偏していた文化のあり方が変わってきたという点がいわれています。中国の影響が薄まるにつれて日本独自の文化が発展していきました。そのなかで花といえば桜、といった考え方が一般的になっていったとされているようです。
さらに花という文字に別の言葉を付け足すことで1つの熟語として使われるようになりました。たとえば、花影、花冷えといった言葉がそれにあたります。
花曇りという言葉もそのなかの1つなのです。
一方、日差しのある明るい曇り空とは、空の高い場所にある薄い雲に覆われた空をいいます。気象用語にある「薄雲」のことです。
雲は発生する場所によって上層雲、中層雲、下層雲の3種類に分けられています。このうち、上空5000mから13,000mの高さにある雲を上層雲と呼び、いわゆる薄雲やうろこ雲がこの範疇に入る雲です。
また、晴れや曇りといった用語の使われ方は雲の量によって決まります。気象庁の天気概況用語説明によれば、雲量2以上8以下の状態を「晴」と呼び、雲量9以上で雨が降らない状態が「曇」とされます。
さらに「曇」は「曇」と「薄曇」の2種類に分けられており、中層雲、下層雲が上層雲よりも多いときを「曇」、上層雲のほうが他の2種類の雲より多いときを「薄曇」と呼んでいるのです。
日差しのある明るい曇り空とは、「薄曇」の状態を指すものと考えてよく、ここに桜を意味する花が付いたのが花曇りということができるでしょう。
花曇りが使われる時期
花曇りが使われる時期は3月下旬から4月上旬となります。桜が開花してから散るまでの間の短い期間に使われる言葉です。
この時期は移動性高気圧の影響で周期的に天気が変わります。晴れの日が続いたかと思うとすぐに雨が降る、といった具合です。春に3日の晴れなし、という言葉がありますが、この時期を的確に表現したものといえるでしょう。
天気が短い間隔で周期的に変るところから曇る日も多く、そこから花曇りという言葉ができたともいわれています。
まとめ
「花曇りに暮れを急いだ日はとく落ちて、」
とあります。
物寂しいけれど、なんとなく明るさも感じられる春の夕暮れの様子が花曇りという言葉によってより引き立てられている気持ちがします。
花曇りという言葉には、暗さよりも明るさを感じさせる雰囲気があるのですね。