季節の言葉

四季折々の言葉や行事を綴っていきます

処暑とは何か?二十四節気を解説!

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処暑とは暑さが一段落した時期をさす二十四節気上の言葉です。

 

お盆休みが終わり、8月も半ばを過ぎると、朝晩はだいぶ過ごしやすくなってきます。もちろん、日中は暑い日が続きますが、夜になると虫が鳴き、吹く風も涼しくなってくるからです。気持ちのうえだけでなく、肌感覚としても秋が近づいてきたことを感じられる時期となります。

 

この時期が立秋から処暑に入る頃となります。季節が前に進んだことを実感できる時期が処暑なのです。

 

ここでは、そんな処暑について解説していきます。

 

処暑の意味と時期

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処暑とは二十四節気の1つで、秋の部の2番目にあたります。

 

二十四節気とは、太陽の動きを中心にして農作業の指標となるように考えられた暦のことです。私たちの先祖は、春夏秋冬の4つの季節をそれぞれ6等分して全体を24に分け、それぞれに名前をつけて、日々の暮らしの指標としました。

 

秋の部は、立秋処暑、白露、秋分寒露霜降の順に並んでおり、処暑はそのうちの2番目の時節にあたります。

 

具体的な日取りは決まっておらず、年によって変わります。二十四節気は太陽の動きを基に決められるため、あらかじめ日取りが決まっていないからです。ただし、年ごとの日取りにさほど大きな幅はなく、毎年8月23日から9月6日頃までとされています。

 

2024年の処暑は、8月22日から9月6日までです。

 

処暑の意味は、それまでの暑さが落ち着き、涼しくなってくる頃、とされています。しかし、現実には真夏と変わりがない暑さが続き、熱中症に注意しなければならない時期です。まだまだ、暑さが落ち着くという実感をもつことはできないという方も多いかもしれません。

 

処暑の行事

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処暑であることを理由として何らかの行事が行われることはありません。しかし、この時期に多い台風の発生に由来する行事は行われています。

 

気象庁がまとめた1991年から2020年までの30年間のデータによると、もっとも台風の発生数が多い月は8月で、その次が9月となっています。そのうち、もっとも台風が日本に上陸した数が多いのは9月で8月が2番目となっているのです。

 

二百十日といって台風に注意しなければならないとされている日も処暑の時期に含まれます。二百十日とは立春から数えて210日にあたる日のことで、毎年9月1日頃になります。

 

この時期は稲の開花期でもあり、稲作にとって大切なときです。そのため台風による被害を防ぎ、豊作を願って風を鎮める祭りが各地で行われてきました。この祭りは風祭りと呼ばれ、有名なのは富山市八尾町のおわら風の盆です。

 

毎年9月1日から3日にかけて行われるおわら風の盆は、哀愁を帯びた胡弓や三味線の音に合わせて踊る姿が印象的な行事で300年以上にわたって続いています。

 

まとめ

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処暑は、朝晩は涼しい風が吹き、秋の訪れを感じることができますが、日中は真夏と変わらない暑さが続く時期です。また、稲作にとって大切な稲の開花期と台風が多く発生する時期とが重なるため、昔から各地で風を鎮めて豊作を願う風祭りが行われてきた時期でもあります。

 

季節がさらに一歩前に進んでいることが実感できる時期が処暑といえるでしょう。

 

立秋とは何か?二十四節気を解説!

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立秋と聞くと、何やら涼しげな風が吹いてきそうな気持がしますが、実際には暑い最中です。しかも1年のうちでもっとも暑いとされる大暑の次にあたる季節なので、涼しげな風など感じることはできない、という方も多いことでしょう。

 

ただ、見方によってはうだるような暑さのなかに、秋の風情を感じることができるのも立秋の時期の特色です。なかには、空の色や陽の光などから真夏のギラギラした感じが薄らいでいる感じをもつ方がいるかもしれません。

 

ここでは、そんな立秋について、意味や時期、さらに行事などを解説します。

 

立秋の意味と時期

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立秋二十四節気の1つで、秋の部の最初にあたる時節をいいます。二十四節気とは太陽の動きをもとに作られ、農作業の指標として使われてきた暦です。1年を春夏秋冬の4つに分け、それぞれの季節をさらに6つに区分して作られています。

 

秋の部は、立秋処暑、白露、秋分寒露霜降の6つから成り、立秋は1番目にあたる時節なので、暦のうえではこの日から秋となるのです。

 

ちなみに、立秋は秋になったその日をさす使い方が一般的です。しかし、時期としては二十四節気の次の処暑になる前日までが立秋となります。

 

具体的な時期は、毎年8月7日頃から8月22日頃とされますが、明確な日付けが決まっているわけではありません。二十四節気は太陽の動きをもとに作られているので、年によって立秋とされる時期が変わってくるからです。

 

2024年の立秋は、8月7日から8月21日までとなります。

 

立秋を過ぎても暑さはさほど変わりません。むしろ気温が高い日のほうが多いようです。気象庁が公開している月ごとの平均気温をみても、もっとも高い月は8月となっています。

 

7月の平均気温は8月の次に高く、続いて9月という順番です。立秋の時期に気温がもっとも高くなり徐々に低くなっていくというのが毎年の傾向のようです。

 

なお、立秋という言葉には暑さの頂点を極めるという意味もあります。大暑から一足飛びに涼しくなるという意味ではなく、激しい暑さが収まっていく始まりの日ということなのです。そのため、立秋以降続く暑さは残暑と呼ばれ、それまでの夏の暑さとは違った呼び方となっています。

 

立秋を過ぎた頃から、夜になると虫の音が聞こえ始めます。場所によってはひぐらしが鳴きだします。また、陽射しの強さに陰りを感じたりすることもあります。

 

夏から秋に向けて少しずつ季節が動いていくのを感じることができるのもこの時期の特徴といえるかもしれません。

 

立秋の行事

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立秋という理由で行われる行事はないようです。しかし、立秋の時期に重なる行事はあり、代表的なものがお盆です。

 

8月13日から16日にかけて行われるお盆は、なくなった先祖の魂をお迎えし、再びお帰り頂く行事です。迎え火、送り火としてオガラを焚き、盆棚をしつらえてお供えをし、盆提灯を飾ります。

 

きゅうりやなすに割りばしなどで足を付け、馬や牛に見立てた飾りを作りお供えするのもお盆の行事として有名です。

 

また、盆踊りも開催され、地域の交流の場となっています。

 

ちなみに、行事ではありませんが、暑中見舞いが残暑見舞いとなるのは立秋以降です。暦上の秋になることで暑さの呼び方も残暑に変わるわけです。

 

立秋の使われ方

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立秋は時候の挨拶として手紙の書き出しに用いられます。また、俳句の季語としても使われます。

 

俳句の季語として使われる場合には、傍題として、秋立つ、秋来る、秋に入る、今朝の秋といった言葉があります。

 

まとめ

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立秋は秋の始まりを表す言葉ですが、実際には暑い日が続いており、大暑の時期よりも気温が高い日も多くみられます。しかし、この日を境にして徐々に暑さも収まっていき、秋の気配を感じ始める時期でもあります。

 

感性をいつもより鋭くすることで、目に見えない秋を探す楽しみを味わうことができるのが立秋の時期といえるでしょう。

 

大暑とは何か?二十四節気を解説!

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念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城

 

この句に象徴されるように大暑は猛烈に暑い季節です。小暑が梅雨の終わりの時期にあたっていて、いくらか肌寒さを覚えるような日もあるのに対し、大暑にはそれがありません。

 

酷暑、炎天下、熱帯夜といった言葉が新聞やテレビで頻繁に使われる夏本番の暑さが到来するのが大暑なのです。

 

ここでは、そんな大暑の意味や時期、さらに行事について解説します。

 

大暑の意味と時期

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大暑二十四節気の1つで、夏の部の最後にあたる時節をいいます。二十四節気とは、太陽の動きに対応して作られ、季節の微妙な変化を表す区分として使われてきたものです。主に農作業の指標とされてきましたが、現在は日本の季節感を表す言葉として一般に定着しています。

 

二十四節気は1つの季節の移り変わりを6つに区分して表します。夏の部でいえば、立夏小満芒種夏至小暑大暑の順番となっています。言い換えると、だんだんと暑くなっていく過程を立夏から大暑までの順にあてはめているのです。

 

大暑は夏の部の最後にあたりますから、もっとも暑い時期を意味していることがわかると思います。

 

具体的な時期は、二十四節気が太陽の動きに左右されるところから毎年変わりますが、基本的に7月23日頃から立秋の前日、8月7日頃までというのが一般的です。

 

2024年の大暑は、7月22日から8月6日までとなります。

 

また、大暑は梅雨も明けて日本列島が太平洋高気圧に覆われ、晴れた日が多くなります。気象上も暑い季節となるのです。ただし、暑いがゆえに大気は不安定となって、雲がわき、突然の大雨に見舞われることがあります。

 

このときにわく雲は積乱雲と呼ばれ、大雨やひょう、雷といった気象現象を引き起こし、災害につながる危険性をもっています。

 

近年、ゲリラ豪雨という言葉が使われるようになりましたが、その原因となるのが積乱雲なのです。大暑は積乱雲の発生による災害に注意しなければならない時期ともいえるでしょう。

 

大暑の行事

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大暑の期間には、花火大会やお祭りといった行事が各地で行われます。また、暑中見舞いを出すのもこの時期です。

 

ただし、行事によっては小暑の時期と重なるものもあり、大暑だからという理由で行われるものではないようです。すでに解説したとおり、二十四節気は太陽の動きによって始まる時期が変わるので、年によってはその行事が行われるのが小暑であったり大暑であったりするからです。

 

そのうえで、大暑の時期に行われる代表的な行事として青森のねぶた祭りがあります。ねぶた祭りが行われるのは毎年8月2日から7日なので、まさに大暑の行事ということができるでしょう。

 

また、土用の丑の日にウナギを食べるのもこの時期の行事として定着しています。土用とは二十四節気では表すことが難しい季節の変化をよりくわしく知るために考えられた雑節と呼ばれる暦のうちの1つです。

 

立春立夏立秋立冬の前、18日間を土用と呼んでいます。土用の丑の日とは立秋の18日前から始まる夏土用のうち、丑の日にあたる日をいい、この日にウナギを食べると体に良いとされたことに由来する行事です。

 

ただし、宗教的な意味はなく、平賀源内がウナギ屋さんのために考案したコピーがそのまま行事として定着したものです。

 

この行事は年によっては小暑の時期に行われることがあります。スタミナのあるものを食べて熱い夏を乗り切る、というのが趣旨なので、小暑大暑といった節気にはこだわらない行事なのです。

 

同様に、小暑の時期と重なるのが暑中見舞いです。暑中見舞いは小暑から立秋前日までに届くように出すのが礼儀とされており、大暑にこだわるものではないからです。ただし、小暑に入ってからしばらくは梅雨明け前の肌寒い日が続くことがあるので、実際には大暑の前後に出すことが多くなるでしょう。

 

大暑の使われ方

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大暑は暑い夏を意味する言葉として、「大暑の候」のように手紙の書き出しに使われます。

 

大暑の候、みなさまにはお変わりありませんか」

 

などという具合です。

 

しかし、暑中見舞いを出す場合には、

 

「暑中お見舞い申し上げます」

 

として、大暑の候を使うことはしません。

 

また、大暑は俳句の季語としても使われます。冒頭にあげた村上鬼城の句の他にも

 

兎も片耳垂るる大暑かな 芥川龍之介

 

といった句があります。

 

まとめ

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夏真っ盛りというイメージをもつ言葉が大暑です。暦のうえでは立夏から始まった夏が頂点を迎える時期であり、ここを過ぎると徐々に暑さがやわらいでいくとされます。

 

実際にはまだまだ暑い日は続くのですが、1つの区切りとしてとらえると暑さに対する考え方も少し違ってくるかもしれません。

 

小暑とは何か 二十四節気を解説!

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小暑は梅雨が明けて本格的な夏の始まる時期を指す言葉です。陽の光も強くなり暑さが実感され始めるときでもあります。

 

しかし、この時期は梅雨の末期にもあたり、大雨による災害も発生します。

 

季節の変わり目を感じることができるのが小暑の時期といえるでしょう。

 

ここではそんな小暑の意味や使われ方について解説していきます。

 

小暑の意味と時期

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小暑二十四節気の1つです。二十四節気とは太陽の動きを中心にして、春、夏、秋、冬の4つの季節の移り変わりを季節ごとに6つの節気に分けたものをいいます。

 

このうち夏の部は、立夏小満芒種夏至小暑大暑の6つの節気に分けられており、小暑はそのうちの5番目に当たります。暦の上では毎年7月7日頃から大暑の前日までが小暑の時期となるのです。

 

2024年の小暑は7月6日から7月21日までとなります。

 

本格的な夏の暑さが到来する大暑の前にあたる小暑は、梅雨明け前後にあたり、まだ梅雨の寒さと夏の暑さとがせめぎあっている季節です。

 

さらに、梅雨の末期ですから、大雨による災害が発生する可能性が高い時期でもあります。この時期は南の海上で発達した太平洋高気圧に押し上げられるようにして梅雨前線が北上します。同時に太平洋高気圧のへりに沿って暖かく湿った空気が日本列島に流れ込みます。

 

そのため、日本上空では雨を降らせる雲(積乱雲)が多く発生。これらがつながったものは線状降水帯と呼ばれて日本各地に大雨を降らせるのです。この大雨が災害を発生させる原因となります。

 

小暑は大雨による災害が発生しやすい時期ということもできるでしょう。

 

小暑の行事

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小暑の時期に行われる行事には7月7日の「七夕」があります。1年に1度の織姫と彦星の逢瀬にちなんだ七夕の行事は日本全国で行われています。笹の葉に吹き流しや折り鶴など様々な形の飾りや願い事を書いた短冊を下げた七夕飾りはこの時期の名物です。

 

また、小暑の時期には、冷や麦やそうめん、かき氷といった冷たいものを食べて暑さを忘れる暑気払いという風習があります。

 

さらに、小暑も終わりとなる7月20日頃には夏土用の時期に入ります。土用とは二十四節気では表現しきれない季節の微妙な変化を表した雑節と呼ばれる節気区分の1つです。

 

土用は立春立夏立秋立冬となる日の18日前から始まるとされています。夏土用とは立秋の18日前から立秋前日までの期間のことです。

 

夏土用には、土用の丑の日と呼ばれて暑さに負けないスタミナをつけるためにウナギを食べる風習があります。昔ながらの風習ということで片付けられがちですが、実はウナギが売れずに困っていた鰻屋さんに平賀源内が知恵を授けたのが始まりとされているのです。

 

宗教上の禁忌とは関係のない、庶民の生活から生まれたものが昔ながらの風習として社会に根付いた好例といえるでしょう。

 

小暑の使われ方

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小暑は、時候の挨拶や俳句の季語として使われています。

 

時候の挨拶ならば

 

小暑の候、みなさまにはお変わりありませんか。」

 

などという具合に使われます。

 

俳句ではいくつか例句はありますが大暑ほどではないようです。歳時記によっては傍題にすら掲載されていないものもあります。大暑のようにストレートな暑さを表現している言葉ではないので、取り扱いも微妙なものとなっているのかもしれません。

 

まとめ

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小暑について解説してきました。梅雨の寒さが夏の本格的な暑さへと移行する端境期であるためか、次の大暑ほど頻繁に使われているイメージが少ないのが小暑の特徴といえるのかもしれません。

 

しかし、季節の境目であるからこそ、自然の微妙な移り変わりを楽しむことができる時期だと思います。

 

夏越しの祓ってどんな行事?意味と由来を解説!

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夏越しの祓ってよく聞くけれど、何をする行事なのかな?

 

このような疑問をもつ方は多いかもしれません。また、テレビのニュースなどで夏越しの祓の行事として「茅の輪くぐり」の様子が放映されますが、その由来についてもよくはわからない、という方はいると思います。

 

そこで、夏越しの祓の意味や由来、さらにはそのときに行われる行事について解説します。

 

夏越しの祓の意味とは

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夏越しの祓は、身に付いた様々な穢れや災厄の基となる罪を払うために行なわれる行事です。

 

日本古来の神道では、人が安らかに生きていくため、一定の時期にその人の身に付いた穢れや罪を払うことが必要と考えられており、そのための行事が行われてきました。この行事は、大祓(おおはらえ)と呼ばれ、毎年旧暦の6月末と12月末に行われてきたのです。

 

明治になり、新暦が使われるようになると、大祓の行事はそのままに、旧暦を新暦に読み替えて、現在に至っています。

 

いわば、半年に一度の割合で、身に付いた穢れや災厄の原因となる罪をきれいに払うのが大祓の行事の目的です。夏越しの祓とは年2回の大祓の行事のうち、6月に行われるものを指します。

 

何をする行事なのか

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夏越しの祓の具体的な行事には、茅の輪くぐりと形代流しの2つがあります。

 

茅の輪くぐり

 

茅の輪くぐりとは、茅(チガヤ)と呼ばれるイネ科の植物を使って作られた直系数メートルにもおよぶ大きな輪を決められた手順にしたがってくぐる行事です。

 

この行事は次の神話に由来するとされています。

 

昔、備後の国を旅していたスサノオウノミコトを蘇民将来という人が貧しいながらも手厚くもてなしました。何年か経った後、そのお礼としてスサノオウノミコトは、病が流行ったら茅で輪を作り、腰につけておけば病から免れることができるとの知恵を授けました。

 

その後、病が流行ったときにスサノオウノミコトのいう通りにすると、病にかかることを免れた、というものです。

 

神話のなかでは腰につけるほどの小さなものだった茅の輪が現在のように大きなものとなり、輪の中をくぐり抜けるようになったのは江戸時代からといわれています。

 

茅の輪をくぐることで、身に付いた穢れや災厄のその罪を払うことができるとされたのです。

 

茅の輪のくぐり方には神社ごとに決められた作法があるので、それに則って行うことが必要です。また、茅の輪をくぐる際には茅をむしってもって帰ることはしてはいけません。

 

茅の輪は、くぐった人の穢れを移しかえるものとされており、その茅を持ち帰るのは穢れを持って帰るのと同じだからとされているのです。

 

ただし、神社によっては持ち帰り用の茅が用意されているところがあるようなので、事前に確認するのもよいでしょう。

 

形代流し

 

形代流しとは、人の形に見立てた紙の人形に自分の罪や穢れを移すことで邪気を払う行事です。

 

紙で作られた人形に名前を書き、それで自分の体をなで、息を吐きかけたうえで川に流すことが一般的ですが、神社によって作法があるので、それに従うようにしましょう。

 

また、形代には車用のものもあります。自動車をかたどったこの形代は車形と呼ばれ、邪気を払う事で交通安全を祈願するものです。

 

夏越しの祓のときに食べるもの

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夏越しの祓だからといって食べなければならない食べ物はありません。また、食べてはいけないものもありません。夏越しの祓に関して食べ物に関する禁忌はない、と考えてよいでしょう。

ただし、習慣として食べられてきた食べ物はあります。有名なのは「水無月」という和菓子です。

 

水無月」は氷を模した白いういろうの上に邪気を払うとされる小豆を乗せた和菓子で、毎年、夏越しの祓の時期になると店頭に並びます。

 

また、近年、夏越しの祓の時期にあわせて公益社団法人「米穀安定供給確保支援機構」によって「夏越しごはん」が新たな行事食として推奨されるようになってきました。

 

「夏越しごはん」は雑穀の入ったご飯の上に茅の輪を模した丸い夏野菜を乗せて食べるものです。乗せる夏野菜には丸形という以外に制限はなく、好きな野菜を使って作ることができます。また、丸形とはいっても使う食材を丸くして盛りつければよいとされているので、堅苦しく考える必要はありません。

 

公開されているレシピもカレー、ガバオ風ライス、かき揚げ丼など多彩です。

 

まとめ

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夏越しの祓は半年ごとに行われる身についた穢れを払う大祓の1つです。穢れを払うというと少し緊張してしまいますが、堅苦しく考えることなく、季節の節目に自分を見つめ直す行事ととらえればよいのではないでしょうか。

 

五月晴れはいつ使う?意味と使う時期を解説!

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五月晴れという言葉を聞くことは多いと思います。五月のよく晴れた日を表す言葉として使われることが多いのですが、本来の意味は違うとされています。

 

実は、五月晴れとは梅雨の合間に顔を覗かせる晴れ間のことをいっていたのです。それがなぜ、五月の晴れた青空をさしていわれるようになったのでしょうか。

 

ここでは、五月晴れの意味と使われ方について解説していきます。

 

五月晴れの意味

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五月晴れには「ごがつばれ」と「さつきばれ」の二種類の読み方があります。

 

「ごがつばれ」は文字通り五月のよく晴れた日のこと。これに対して「さつきばれ」は梅雨の晴れ間のことをいいます。

 

ここで問題となるのは「さつきばれ」のほうです。もともと「さつきばれ」とは、梅雨半ばの晴れた日のことで五月の良く晴れた日といった意味はありませんでした。それが時代とともに二つの意味をもつようになっていったのです。

 

理由は新暦と旧暦の違いからきています。新暦は太陽の動きを中心にした暦です。これに対して旧暦は月の満ち欠けを中心とした暦で、新暦とは1ヵ月ほどの差が生じます。簡単にいうと、旧暦は新暦より1ヵ月遅くなっているのです。

 

そのため、旧暦の五月は新暦では六月のことをさすこととなります。新暦の六月は梅雨の最中ですから、旧暦では五月が梅雨となります。そのため、旧暦では五月晴れとは梅雨の晴れ間のことをさしていたのです。

 

ところが、新暦五月は梅雨入り前の薫風が吹き抜ける心地よい季節。そこで、五月晴れは五月の晴れた日をさして使用されるようにもなりました。「新暦五月」と「五月晴れ」これらの同じ「五月」という言葉が文字通りの意味で使われることが多くなり、定着していったものと考えられているのです。

 

国語辞典では両方の意味を載せたうえで、五月の晴れた日のほうは誤った使い方とわざわざ断り書きを入れています。言葉の意味としては間違っているけれど、既に一般化してしまっているということなのでしょう。

 

五月晴れを使う時期

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五月晴れを使う時期は、一般的には梅雨入り前の五月と考えてよいでしょう。もちろん、梅雨の晴れ間をさす言葉として使っても問題ありません。厳密に使い分けるのであれば、五月には「ごがつばれ」、梅雨入り以降は「さつきばれ」と読んで使うのもよいかもしれません。

 

ただし、五月晴れは俳句の季語となっており、梅雨の晴れ間に使う言葉とされています。俳句では五月晴れを五月に使うのは間違ったこととされているので注意しましょう。

 

まとめ

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五月晴れは、新暦と旧暦の入れ替わりによって意味が違ってきた言葉です。どちらが正しいというのではなく、ときと場所に応じて使い分けていくことが必要な言葉といえるでしょう。

 

梅雨寒とは何?温度は何度くらい?意味と使われ方を解説!

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梅雨の時期には、急に寒くなることがあります。暑い日が続いて、半袖のシャツを着て外出していたのが、突然の寒さであわてて冬物のセーターを取り出した経験のある方は多いことでしょう。

 

この現象を梅雨寒、もしくは梅雨冷と呼びます。

 

本来暑い夏に寒い時期があるというのは不思議ですが、いくつかの気象条件が重なることでこのような現象が起きるのです。

 

実は、日本には梅雨寒がない地域もあります。これも気象のなせるワザです。

 

ここでは、そんな梅雨寒について解説していきます。

 

梅雨寒の意味

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梅雨寒とは、梅雨の時期に起きる季節外れの寒さのことをいいます。具体的には約20°c前後の気温がその目安とされています。4月上旬頃の陽気と考えるといかもしれません。

 

梅雨寒の原因は、この時期に日本列島の北方オホーツク海上に発生するオホーツク海高気圧が運ぶ冷たい空気です。

 

オホーツク海高気圧自体はもともと亜熱帯ジェット気流によって運ばれてきた温暖な空気の塊ですが、オホーツク海という冷たい海上で発生することで冷やされて冷たくなります。また、日本列島には海上を渡ってくるために湿り気を含み、湿度も高いものとなります。

 

このオホーツク海高気圧と南の海上で発生する太平洋高気圧とが日本上空でぶつかると、そこに前線が発達して雨を降らせます。これが梅雨のメカニズムです。

 

梅雨寒は梅雨の時期にオホーツク海高気圧が運んでくる冷たい湿った空気によって引き起こされます。オホーツク海高気圧の影響が強い関東、東北といった東日本で起きることが多い現象です。この時期、東北地方では「やませ」と呼ばれる冷たい風が吹きますが、これは東北地方におけるオホーツク海高気圧による冷たい空気の呼び名となります。

 

反対に南海から暖かな空気とともにやってくる太平洋高気圧の影響が強い関西、四国、九州などの西日本では梅雨寒となることは基本的にありません。

梅雨時はオホーツク海高気圧と太平洋高気圧が日本列島の上空でせめぎあっており、このうちオホーツク海高気圧の勢力範囲で梅雨寒になるのです。いわば、オホーツク海高気圧の位置によって梅雨寒となる地域が決まってくるといえるでしょう。

 

梅雨寒の使われ方は?

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梅雨寒は俳句の季語として使われています。傍題には梅雨冷、梅雨寒しなどがあります。

 

また、手紙の挨拶文として使われることも多いようです。

 

「梅雨寒の候」といった手紙の書き出しや「梅雨寒の時節柄、ご自愛ください」といった結びの言葉に使われています。

 

梅雨寒が使われる時期は6月初旬から梅雨の終わりまでの期間です。

 

まとめ

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梅雨寒は本来暑いはずの時期に訪れる季節外れの寒さのことです。また、原因となるオホーツク海高気圧の位置によって起きる地域が決まってきます。同じ日本にいながら、梅雨寒のある場所とない場所とが分かれるというのはとても興味深く感じられます。